缶蹴りぐらいのスリリング

小さい時。家の周りに同年代の子がいませんでした。一番近い子でも4つか5つ上の女の子でした。「テクマクマヤコン」という言葉をご存知でしょうか。男の子と遊んだことが無かった僕は、コンパクトという折り畳み式の手鏡をひどく欲しがっていたそうです。

 

そんな僕も小学生になり、比較的家の近くに同年代の男の子の友達が何人かできました。みんなのところへ、僕はよく遊びに出かけるようになりました。同じ田舎で育ったけど僕は、野生児達に衝撃を覚えました。

 

友達が、木になってるドドメといわれる紺色の実を、これうめぇで、といいながら食べだした時は、ずっと外にあったやつを直で!と思いましたし、

特別に秘密の場所を教えてやらぁと言わんばかりの顔で樹液のでる木からコクワガタを採ってる時も、秘密の木の場所とかの前に虫が無理!と思っていましたし、

ここ飛んでいくんべぇと近道した時も、危ないよあとちょっとくらい向こうまで歩けばいいじゃない!と思っていました。

 

中でも衝撃的だったのは缶蹴りでした。テクマクマヤコン系男子の僕は、その手の争う系の遊びは、かくれんぼくらいしかやったことがありませんでした。缶を思いっきし蹴るだなんて。野蛮です。なおかつ、鬼が缶を拾う間に逃げて、鬼に気づかれないように缶に少しづつ近づくだなんて。スリリング過ぎます。早く終われ、なんて思いながら隠れてて、鬼に見つかった後は、怖くて缶まで走れませんでした。

 

スリリング嫌いのこの僕が、30歳無職というスリリングな状況になってしまった。怖くて缶まで走れない、なんてことにならないことを願うばかりです。